Never give up
思わぬ形で終わってしまった19-20シーズン。それでも今年の藤井祐眞を忘れたくない。覚えていてほしい。その姿を、ファウルドローン:被ファウルという切り口から振り返ってみました。
1.その姿は狂戦士のように
突然ですが「バーサーカーソウル」をご存じでしょうか。ざっくり話すと、アニメ「遊戯王」の有名な名(迷?)シーン。主人公の遊戯が絶体絶命の状況から起死回生のカード「狂戦士の魂(バーサーカーソウル)」を引き決着をつける...だけに終わらず。
半ば錯乱状態に陥っていた遊戯は怒りに身を任せ、敵ライフが0になったにも関わらず執拗に攻撃をつづけオーバーキル...という、子供向けアニメの主人公とは思えない姿が有名なシーンです。「何勘違いしてるんだ...まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ!」「ドロー!モンスターカード!」「もうやめて!とっくに羽蛾のライフは0よ!もう勝負はついたのよ!」など名言の宝庫…笑
詳しくは、ここから動画も見れるので興味のある方は←
狂戦士の魂とは (バーサーカーソウルとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
....って、なんで遊戯王?そんなに年齢詐称疑惑を払しょくしたいのか?←
というのも、とある試合を見ていて、このシーンを思い出していたのです。
2019年4月27日。CS第2戦、栃木ブレックス戦。62-89という数字以上に絶望感のある、トラウマと言ってもいい試合。
まあ本当につらかった。前半の奮闘もむなしく、前日のリプレイかのように崩れていく姿。なすすべもなく繰り返されるターンオーバー。勝っているはずの栃木がなおも激しくルーズボールに飛び込み、守備を強める。フラストレーションがピークに達したニックは4Qを前に退場。疲労の色が隠せない選手たち。
「最後まで!」と声援を送ってはいましたが、正直「もうやめて!とっくに川崎のライフはゼロよ」状態なのは火を見るより明らかでした。
でも、そんな中で「もうやめて」と思ったのは、ブレックスに対してではありません。
自分の大好きな藤井祐眞に対してでした。
この試合の4Q、藤井くんはとにかくリングに向かっていきました。徹底的に。わき目も振らず。この試合の被ファウル8つのうち実に6つが4Q、8本のFTを生み出し...最後の最後、刀折れ矢尽き、得意のFTを2本外し交代するまで、突撃を繰り返しました。もうとっくに勝負はついているのに、体力の限界は訪れているのに、ボロボロになるまで突っ込んでいく姿。他の選手を悪く言うわけではないけれど、ただ藤井くん1人だけが意地になっているように見えるシーンもあって、、、
そのひたすらにその瞬間に執着する姿を誇らしく思う一方で、狂戦士のような何かを感じて。もうライフはゼロだ、無理しなくていい、怪我だけはしないでくれと、そう思わずにはいられませんでした。
この表情、この汗の量。これで1Qの終わり。
— あさみん⚡♦😺 (@asamin_sport) 2019年4月27日
最初から出し尽くしていた男が最後まで意地で食らいついていた4Qの姿には、言葉に出来ない思いがこみあげてきて。
ただただひたむきなバスケットへの執着。伝播して欲しい。伝播させて欲しい。#川崎ブレイブサンダース#藤井祐眞 pic.twitter.com/eSfO3KCI3D
だからこそ。今度は藤井くん一人が突っ込んでるなんて思わせない、そんなチームの中心になってほしい。周りの選手を動かせるまでに、その執着を伝播させてほしい。そう思ったのです。
2.Never Give Upのカタチ
そして迎えた今シーズン。目覚ましいブレイブサンダースの快進撃の中心に、藤井祐眞がいました。今年の藤井くんを語る上で欠かせないのが、被ファウル数。目で見た姿の前に、少し数字を見てみましょう。以下、バスナビDB様のデータを引用しています。
【表彰されない成績編】
— バスナビDB (@basnavi_db) 2020年3月29日
2019-20シーズン B1の被ファウル(ファウル・ドローン)数上位10名です。
1位は京都のジュリアン・マブンガ選手で295回となります。 pic.twitter.com/zwJ73fhVtB
このカタカナが並ぶ中で燦然と輝く藤井祐眞の4文字。唯一の純粋なガード。ペイントエリアにダバンテ・ガードナーのような2mオーバーの重戦車が突っ込んでくるならいざ知らず、178cmの藤井くんがこれだけのファウルを引き出すというのはとんでもない離れ業ではないでしょうか。同じチームの大黒柱、ニックの156を上回ることも大きな衝撃です。
更に驚くべきことに、実はこの数字、昨季より3分ほどプレイタイムを減らしたうえで叩き出しています。一試合平均にして被ファウルは3.3→4.4、FT試投数は2.2→4.0、PTは26.1→23.1。おまけにFTの確率は昨季以上。突っ込んでくるから止められない、かといってファウルしてもFTを決めてくる、これほど厄介な選手はなかなかいないでしょう。
そんな数字を象徴するかのような試合が、10月20日の千葉ジェッツ戦、マイナビの企画でブースターが選ぶベストゲームにも選ばれた21点差大逆転の試合でしょう。
この試合の被ファウル10、FT16/17という数字の化け物っぷり。あと1本FTを決めていればBリーグ記録に並ぶほどの大活躍でした。じわり、じわりと点差を詰めるには時間が止まり確率の高いFTが非常に効果的。やけっぱちで打ったスリーポイントが決まるよりも、相手にとってはよっぽど嫌なこと...それを忠実にやってのけた姿は最高にかっこよくて。
この試合を見ながら、僕は反省しました。
あの栃木戦の姿は、狂戦士などではなかったと。ただひたすらに勝つために必要なことを諦めずに遂行する。理詰めで、しかし本能のままに勝負に執着するその形が、ガムシャラなアタックなのだとあらためて思い知りました。
ライフはゼロ?誰の目にも勝負はついた?何勘違いしてるんだ。少なくとも、藤井祐眞は僅かな可能性を信じて勝負を諦めていなかった。
今年から選手一人一人についた二つ名、藤井くんはNever give up.
それは今に始まったことではない、ずっと貫いてきた姿勢。
ようやくそれが結実した、その結果が数字にも表れているのだと思います。
そして、もう一つ嬉しいことは、この姿はチームにも確実に影響を及ぼしていること。
まさにこの千葉戦、思い出されるシーンは青木ヤスくんの連続バスケットカウントではないでしょうか。ガムシャラに食らいつく姿勢が後輩にも伝わり、強豪千葉をも飲み込んだ。一人だけの力ではない、チームに想いが伝わって、大きな成果が生まれた。画面越しではあったけれど、応援していて本当によかった、嬉しくてたまらない試合でした。
更には、天皇杯。宇都宮戦、渋谷戦と藤井くんを欠いた試合...でも、不思議と喪失感を感じずに応援することが出来ました。それはきっと、諦めずガムシャラに戦う姿がチーム全体に乗り移っていたからだと思っています。多くの選手を欠いてなお、最後の最後まで可能性を信じて戦い抜くことが出来るチームになってくれたことが本当に嬉しかった....
だからこそ、今年のチームに優勝してほしかった。もっといえば、リーグ最高勝率を残して、MVPを取って欲しかった、それだけが心残りで、今シーズンがこんな形で終わってしまったことは本当に残念です。
でもきっと大丈夫。シーズンが始まったなら。同じようにあきらめない姿を、チームで突っ走る姿を見せてくれるはず。心配はいらないでしょう。きっと今度こそ、優勝できるはず。
先の見えない日々ではありますが、くじけそうなときは、「まだバトルフェイズは終了してないぜ!」の精神で。 Never Give Upで、また思いっきり応援できる日を楽しみにしています。